ネットワークカメラの寿命ってどのくらい?
カメラをご購入いただく方から時々「どのくらい使える?」とのご質問を受ける事があります、当店が販売している低価格帯カメラは部品構成や筐体の形状・素材・サイズの違う新しいカメラが次々投入されていますが、メーカーはコストと新機能・デザインを優先して耐久性を重視していないモデルもあり、同一製品でも設置状況で結構な差が出ますから少し無責任ですが「実際に運用しないと分かりません」と回答させて頂いております。
高額だった国産カメラなら10年以上経過しても正常動作する個体も珍しくありませんが、低価格化の為に部品グレードが高くない物で構成されていますからから昔ほど長持ちするとは思えません。
ですが「自分が購入する商品がどのくらい使えるか?分からない」ではあまりにも無責任なので、当店ではDSPなど新規カメラモジュールや新筐体を採用したカメラを入荷した時は1台耐久試験用に抜き取り「どのくらい持つか?」を実際にテストしてデータを蓄積しています。
普通の店舗は販売品の耐久テストなど行っておらず、もし不良で交換したとしても公開する事はありませんから参考として本記事を一読下さい。
耐久試験中のカメラK1-360VRに回復不能な故障が発生しました。
K1-360VRは2017年6月に入荷したUFO型の960P解像度の小型パノラマネットワークカメラで、日当たりの良い出窓に設置して約2年間常時通電で使用していました。
症状は、画像の様に映像が乱れストライプになったり丸円になったり正常な映像を表示できなくなっています、但しWifi通信は正常でバッファーのタイムスタンプは正常に時を刻んでいます、CMOSだけが不良になり他は全て正常と言う珍しい症状です。
今までの経験ではコンバーターチップ不良で通電不可になったり、WIFIチップ不良で通信不可になったりするのが多いのですが、強い衝撃を受けていないのにCMOS映像素子だけがスポットで不良になるのはとても珍しく思います。
CMOSは電子部品としては耐久性が高く「素子が1つ1つ死んで黒い点が増える」液晶モニタ的な壊れ方や「CMOSが焼けて映像に霞が掛かる(正確にはコーティングの日光劣化)」などは良くあるのですが、僅か2年でCMOS素子が80年代MTVの様な映像になる不良はあまり経験がありません。
浸水などの可能性が無くもないので、一応分解をしてみましたが浸水した形跡は無く外的要因は排除して良さそうです。
以上の事からK1-360VR入荷時に懸念はしていましたが「使用による部品劣化」恐らく排熱不足による熱劣化だと思います、XM社のパノラマカメラで直径6cmのモデルはこのK1-360VRのみで、以後は直径9cmに大型化したのでこのサイズでは耐久性に問題が出る事はXM社も予想していたのでしょう。
パノラマカメラとしては初期のモデルなので、現在のパノラマカメラに比べると部品配置に排熱の考慮が無くCMOS、WIFIチップ、赤外線LEDと発熱する物が集中配置されており、赤外線LEDがあるので中央付近にスリットを入れる事もできず裏面がフラットなので天井設置すればエアフローが阻害され常に排熱が不十分となりカメラモジュールは常に高温に晒され故障した…のでしょう。
耐久試験中のカメラは沢山ありますが、K1-360VRが一番始めに壊れたのは意外でした、ACアダプターは3回ほど交換しましたので消費電力が多いモデルなのは理解していましたが、K1-360VRより筐体が小さいK1-180VRの方が先に壊れると思っていました、K1-180VRの内部ボードの構成は同じですが設置時は直立するので熱が逃げやすいのでしょう。
IT機器が永遠に使える訳は無いのでいずれ壊れるのは仕方ありませんが、CMOSのみの不良だと映像はダメでも機器としては正常に動作しているので通信遮断で送信されるオフライン警告通知が行われず、長年運用では映像を確認する頻度も少ないですから状態異常に気付くのが遅れてしまうのでこのタイプの壊れ方は非常に厄介です。
個体や設置場所により必ず同じように故障するとは言えませんが、K1-360VRをご購入された方は天井との接地面を開けてスペースを取りエアフローを確保するご対策をお願いします。