PLCアダプターを使ってコンセント配線しかない場所でネットワークカメラを使う

 ネットワークカメラの設置で最も頭を悩ませる事は「カメラへの配線です」ソーラー充電式は単体で動作しますが日照条件に左右され基本的に検知後数分のパートタイム動作なので24時間監視では使えません、次に簡単なのはWifiネットワークカメラですが現在販売中のミディアムクラスのカメラは2.4GHz周波数を使っており混線による切断・通信速度低下が著しく荒野の一軒家か離島の超過疎化地域でしか安定した接続ができず、都心は当然牧歌的な住宅街でも断続的にオフラインとなり監視記録に空白期間が発生する事になります、将来的に5GHz Wifiのネットワークカメラがローコスト化するでしょうが、その頃には5GHzでも同じ様な状態になるかも知れません。
 結局、安定的に運用するには有線LAN接続が最適なのですが有線LANが配線済みの新しい物件なら良いですが、PF管すら使っていない建屋の場合新たな配線を通す事は苦行以外の表現が思いつきません、まあそれでも木造家屋なら何とかなりますがは問題はコンクリート建築の場合です。
 特に構造材になっている地下・半地下の頑強さはハンパではありません、カメラ設置のアンカー穴でも四苦八苦しますから貫通穴を空けるには専用の高価な設備と下地調査が必要で当然専門業者に依頼する事になり、そのコストは安くて数十万円~の費用が発生します「直径6ミリのLANケーブルを通すだけ」に法人ならともかく個人で承諾できる方はかなり少ないと思います。
 そんな時に使うのがPLC(Power Line Communications / 電力線を利用したLAN通信)です、極めて特殊な事例を除き昭和中期以降の建屋なら地下や半地下でも照明用の電気配線が存在しますからその電気配線を有線LAN化してネットワークを構築しネットワークカメラを運用します。
 PLCの歴史は古く2000年初期に日本メーカー各社から初期型のPLCアダプターが発売されましたがWifi規格の高速化・低価格化に比べて進化が遅く日本では過去の規格となって忘れられていたのですが、昭和初期の建物が現役のアメリカや歴史的価値があり工事が行えない建屋が現役で使われる欧州では需要が高く、日本人が知らない間に小型軽量・低価格化、最大1000Mbpsの超絶進化を遂げています。

 初期のPLCアダプターは極端にノイズに弱くモーターを使う大型家電や消費電力の多い家電製品の影響で通信が不安定になる傾向がありましたが、現在のPLCアダプターは通信速度の高速化だけでなくノイズにもかなり強くなっています。

◆Tenda AV1000 PH3 1ポートギガビット電力線アダプター

 Tenda(深圳市吉祥腾达科技有限公司) は1999年に設立、中国初の国産ルーターを発売したITデバイスメーカーとしてはソコソコの歴史がある会社です。
 Tenda AV1000 PH3 PLCアダプターのサイズはコンセントに刺した状態だと縦横5cm 厚み3cm程度のコンパクトサイズなのに最大有効伝送距離300メートル、最大通信速度は1000Mbpsで全負荷時の消費電力は僅か3.2Wと大型化傾向の強い最近のWifiルーターと比べ驚きサイズと低消費です。

 基本2台のセット売りで初めからペアリングされていますが、追加で単品購入した場合はペアリングボタンを相互に押してペアリングすれば台数を増やす事も可能です(最大接続台数は資料が無く不明恐らく10台くらい?)、接続は親機や子機の概念がないのでどれか1台をコンセントに刺してからインターネットルーターのLANケーブルを接続し、建屋内のコンセントにもう一台を刺せば有線LANのインターネット回線の出来上がりです。(PLCアダプターはDHCPを消費しません)

◆Tenda AV1000 PH3 PLCアダプターの実際の通信速度は?

 PLCアダプターは建屋の条件により異なりますのであくまで目安ですが、私の住居(3階建て)の結果という事をご留意ください。
 2階Wifiルーターから一番離れた上階の3階で2.4GHz Wifiの通信速度は8.2Mbps (恐らく隣家のWifiルーターの影響だと思います、安いAndroidタブレットでは通信不可能、ノートパソコンでも時々オフラインとなります) 同じ場所でTenda AV1000 PH3 PLCアダプターだと 35Mbps位で安定して接続できました。 1階各所の測定値は32Mbps(1階は総コンクリート造り) 1~3階色々探して最も悪い所は21Mbpsでした。(エアコン用コンセント) ルータに接続したPLCアダプターと同じ2階のコンセントでは、250Mbpsの速度が出ました。 通信速度の増減はコンセントが繋がっている電気配線がブレーカーをどれだけ跨いでいるかが肝らしく、同一ケーブルなら最大通信速度に近い速度が出ると思いますが分岐が遠い程速度が低下する様です。

 ただ、最低の21Mbpsでも1080pのカメラなら4~5台、4Kカメラは若干フレームレートを下げたら2台程度運用できると思いますし、コンクリート壁を通過させる事をメインであれば壁の外にあるコンセントと同じか最も近い電気配線のコンセントを探してPLCアダプターを接続すればそこそこの通信速度を確保できると思います。
 ある家電を動作させると極端に速度が低下する場合は、ノイズ発生源の家電にノイズフィルター経由で通電すると軽減する様です。

 ノイズフィルターで無くてもサージプロテクタでも効果がある様です。

◆業務運用できる品質なのか?

 PLCアダプターを使った施工はまだ数件しかなく経過年数も少しなので経年によるフィードバックがないのですが、現状は問題なく動作しており有線LANで接続したカメラと同等に動作しているそうです、ただPLCアダプターにも寿命があり業務使用なら定期的に交換する必要がありコンセントが1口なら電気工事が必要で若干コスト増になりますが、壁の貫通工事費よりは確実にコストを削減できると思います。
 1階のガレージにネットワークカメラ設置した又はしたいがWifiでは接続できない又は不安定なので有線LAN接続したいがコンクリート壁で難しい方や、総コンクリート住宅でWifiが弱く一部の部屋しかインターネットできない方などはPLCアダプターをご検討下さい。

oosaka-bouhan

防犯ツールのインプレと販売をしています。 得意分野はネットワーク防犯カメラなのでカメラ多めです。

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